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【小話】彼と私と空と雲 お父さんとお母さんが一緒に飛んだらしい

「…………」
「???」

 二人の息子の内の一人が何故か恨めし気な目で私を見ているんだけど何でかな……?

「どうしたの。何か私に言いたいことでもあるの?」

 今日は普通に仕事の日だったし何か約束をしていて忘れたということも無い筈なんだけど。

「……ずるい」
「え?」

 恨めし気な顔をして私のことを見上げていた次男の翔(かける)がボソッと呟いた。

「ずるいって言ってるの!」
「なんで? 私、何かずるいことした?」

 翔はブツブツ言いながら両手をブランブランさせている。どうやら理由を話すつもりは無いみたいだ。

 仕方がないから長男の颯(はやて)に視線をうつす。私と目が合うと肩をすくめてみせた。こんな仕草が妙に一馬さんに似ているので時々ドキッとしてしまうよ。

「なにがずるいの?」
「今日、仕事でお父さんがいる基地に行ったでしょ?」
「うん。だけどお仕事だよ?」
「分かってる。で、お父さんの戦闘機の後ろに乗せてもらって飛んだんでしょ?」
「うん、飛んだね、飛びたくなかったけど」

 十年越しの野望がかなったって一馬さんはここしばらくご機嫌だった。私個人としては濃霧とか何かで中止になってくれないかと密かに祈っていたんだけど本日はもうこれでもかってぐらいの晴天だった。

「お父さんと一緒に飛んだのがずるいんだってさ。翔も一緒に乗せて欲しかったって」
「それは無理だよ翔~~。車とはわけが違うんだから……」
「……でもずるい」
「そんなこと言われてもお仕事だからね。別にお父さんと楽しくドライブしていたって訳じゃないんだから」

 少なくとも離陸した直後までは一馬さんだって真面目な顔をしていたんだし?

 え? 離陸した後はどうしたのかって? 新型戦闘機の性能を存分に御堪能下さい(^^♪とかふざけたことを言って思いっ切り好き勝手にお飛びあそばしましたとも! なにも胃から飛び出なかったのが不思議なぐらいだよ。

「僕もなる!」
「はい?」
「僕も戦闘機のパイロットになってお母さんを乗せて飛ぶ!」

 一馬さん、あなたの息子は目の前でとんでもないことを宣言しているんですが。

「お父さんじゃなくて?」
「お母さんを乗せるの!」

 やっと十年越しの野望が消えてくれたと思ったらまさかの伏兵……。

 翔はいま幼稚園。そのうちなりたいものが変わるかもしれないよね……? いや、変わって下さい、お願いだから!



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